第3話
「ハクチョウの恩返しで伊豆沼レンコン誕生」
文・写真:若柳愛鳥会会長 川嶋保美
宮城の渡り鳥の生息地を守り、
ハクチョウたちを救いたい一心と
豊かな水草の復元…。
そんな願いが叶えられるときがきました。
次の年の四月、土浦から大型トラック
三台に、積荷いっぱいの種蓮根が届いたのです。
集まった地元の皆さんと歓声をあげ喜びながら、
種レンコンを早速沼に植えました。
一部は種子レンコンとして
減反田に植え生育を見守りました。
また、土浦の農家の方々は、その後数年の間
若柳までやって来て、沼への植栽の仕事や
減反田へのハス栽培の指導をして下さいました。
沼へのハス植栽を四〜五年繰り
返しているあいだに伊豆沼・内沼の自然の
ハスや水藻も復活し、
ハクチョウが、餓死してしまうことや
餌を探し飛びまわるときに電線に
触れて死んでしまうというような
悲劇もなくなり、ハクチョウたちの楽園が
もどってきました。
ハクチョウたちを救おう。水草や水藻のある
豊かな湖沼にしようと
立ち上がった運動も終えようとしているころ
減反田に植えた
レンコンが思いもかけぬ功をなし得たのです。
レンコンの味と食感のよさが評判になり
「伊豆沼レンコン」として各地に
出荷が出来るようになりました。
減反田への植栽のレンコンは、
年々栽培面積も増え現在は十七ヘクタール
にも及びますが、生産が追いつかないほどの引き合いがあります。
ハクチョウたちの生息地の自然を守り、
ハクチョウたちの命を救おうとみんなで
走りまわった結果であり
「伊豆沼レンコン」は、まさに
「ハクチョウの恩返し」であると思います。
水面もにあふれるような大輪のハスの花が
咲くようになり、伊豆沼・内沼は、
自然豊かな湖沼としてよみがえり、
地域は豊かな里となりました。
<終わり>
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